国内および国家間の不平等をなくそう
目標10は、SDGsの基本理念「誰一人取り残さない=No one will be left behind」を目指し、国内だけではなく国家間の不平等をなくすという崇高な目標です。
しかし、“格差是正”の実現は、人間社会においては非常にハードルが高いとも言えます。
最近の状況を見てみましょう。
UNFPA(国連人口基金)が発表した2022年版の世界人口白書によると、平均寿命が最も長い国は日本で、男性は82歳・女性は88歳でした。スイスや韓国など上位国もありながら、アフリカのレソト王国は、50.7歳で日本とは大きな開きがあります。
5歳までに亡くなってします子供の数は、日本では1万人あたり4人ですが、世界平均では、1万人あたり380人となんと95倍の格差があります。その一方で、日本の経済力は世界第三位でありながら、日本の世界幸福度ランキングは146中56位となっています(SDGsジャーナルより)
*格差是正にむけて
目標10は世界の格差是正を呼び掛けています。
ターゲット10.1では、各国の所得下位40%の所得成長率が国内平均を上回ることを目指しています。その背景として、所得の多くが最裕福層の上位1%に吸い取られているという見方もあり、世界の約2千名の大富豪の富は世界人口の60%にあたる46億人の富をしのいでいるという議論もあるようです。
目標10のターゲットは以下のように分類できます。
・状態に関する目標(10.1、10.2)
・政治・制度的側面に関する目標(10.2、10.3、10.7、10.a)
・税制・金融、経済的側面に関する目標(10.4、10.5、10.6、10.b、10.c)
いずれにしても多方面からのアプローチが必要になってきます。
*5つのP
SDGsの理念と17の目標を結びつける役割を担っているものが5つのPと言われています。5つのPとは、「人間(People)」「地球(Planet)」「繁栄(Prosperity)」「平和(Peace)」「パートナーシップ(Partnership)」を示して言葉で、SDGsの原典とも言える「2030アジェンダ」の冒頭において、持続可能な開発のキーワードとして掲げられているものです。
そのなかで、2つ目のP『Prosperity (繁栄)』は、世界中のどこにいても格差がなく、豊かさと安全・安心を実感して暮らせ、自然破壊を伴わずに持続可能な生活ができることを目指していますが、企業の役割と責任は大きいとも言えます。
*目標10に関して企業が取り組むべき項目
<フェアトレード>
発展途上国でつくられた農作物や製品を適正な価格で継続的に取引することより、生産者の生活を支える貿易
<持続可能な調達>
人権や環境に配慮した原材料の調達
<ユニバーサルデザイン>
文化・言語・国籍・年齢・性別などの違いにかかわらず、出来るだけ多くの人が利用でき
ることを目指した設計(デザイン)
<雇用条件改善>
同一労働同一賃金、性別・国籍・障がいによる差別の撤廃
2030年のSDGsゴールに向けて、企業が取り組むべき課題は山積しています。
目標10 人や国の不平等をなくそう ターゲット一覧
10.1 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
10.4 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
10.5 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
10.6 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
10.7 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
10.a 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
10.b 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
10.c 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。