都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
目標11は、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とも密接な関係があります。目標9を“企業目線”と解釈するならば、目標11は“生活者目線”とも言えるかもしれません。
また、開発途上国向けの国際的な目標である「スラムの改善」も先進国としても取り組むべきターゲットでもありますが、日本国内での喫緊の課題とも言える「地方創生」「地方再生」とも深く関わるターゲットもあり、生活者がその前提となる安全性の確保も含めた包括的なターゲット一覧となっています。
*目標11は地方創生の有効な手段
人口減少が進む地方都市や過疎に悩む自治体でも、ステークホルダーとして早々にSDGsの目標に注目し取り組みを始められました。北海道下川町では、2017年第1回ジャパンSDGsアワード本部長(内閣総理大臣)賞を受賞されました。取組み内容は、SDGsのコンセプトである、経済・社会・環境、3領域の統合的解決の観点で「①森林総合産業の構築(経済)」、「②地域エネルギー自給と低炭素化(環境)」、「③超高齢化対応社会創造(社会)」などに取り組んできた結果、人口減少緩和や森林バイオマスエネルギーによる地域熱自給率向上などの成果が認められたことによります。(下川町HPより)
このモデルを参考に、2022年まで多くの都市や市町村でSDGs宣言を発表され(全国154の市町村でSDGs宣言)、それらの取り組みは成果を出し始めています。
さらに、ターゲット11.aにある「経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながり」の強化を目指し、各企業も地方自治体との連携のもと、テレワークの推進を支援したり、また、企業と地方自治体との連携としては、*「関係人口」という新しいキーワードも出てきたりしています。関係人口の増加や、企業内でのテレワークの推進がSDGsの実現に貢献しています。
*関係人口とは(総務省)「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。
*災害リスク対策への指針
30年以内に80%近くの確率で発生すると言われている大地震、大洪水、火山の噴火の多い我が国において、避難場所の確保も課題ではありますが、ターゲット11.bのように、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させることは私たちが持続可能な生活を営む上での前提となる基盤整備でもあるので、今後の地方自治体の積極的な取組みが求められています。
*文化遺産や自然遺産の保護とサーキュレーターエコノミーへの期待
ターゲット11.4では、文化遺産及び自然遺産の保護・保全努力を求めるものですが、観光業界でもこのテーマを扱った旅行プランなども登場しています。他の業界でも取り組みが期待されているところです。
また、1 1.cのターゲット「現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する」では、開発途上国だけではなく地元資材の積極的活用も包含しているとみられています。都市部と地方都市の資材生産者との連携でサーキュレーターエコノミー(循環型経済)の構築が求められています。
*新しい都市の在り方コンパクトシティ
地球の全面積にしてわすか2%の都市は、エネルギー消費の60%~80%を消費しているとされています。また、炭素排出量は75%。急激な都市化は、下水や衛生環境、公衆衛生にも大きなネガティブ要因となっています。しかし、一方で、効率的なエネルギー消費や都市行政にはポディティブ要因ともなり、コンパクトシティという概念が登場しました。今後の大きな課題とも言えます。
目標11 住み続けられるまちづくりを ターゲット一覧
11.1 2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する
11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
11.5 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
11.7 2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
11.c 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。